
物価高騰が止まらない現在、個人事業主の方や中小企業の経営者の方は経営が苦しいと感じることも多いのではないでしょうか。こういった状況は放置していても改善しないどころか、どんどん悪化してしまいます。だからこそより安定的にビジネスを継続するため、コストを下げる方法と、売上をアップさせる方法を改めて理解することが大切です。今回は具体的にどうすればコストをカットできるのか、売上を伸ばすことができるのかについて解説します。
昨年から引き続き、2023年もあらゆる面で物価高騰が止まらないことが想定されます。総務省統計局が発表した「2020年基準 消費者物価指数 全国 2022年(令和4年)11月分」によると、 2020年と比較して総合指数が3.8%上昇しています。エネルギーや食料品、衣類、家電製品、携帯電話など、私たちの生活やビジネスに直結するもののコストが上がり続け、個人事業主や中小企業経営者の方のビジネスを直撃しています。

これだけの物価上昇が進む背景には、円安があります。2023年1月は、1ドル円127円46銭まで下落。大方の予想を上回るスピードで円安が続いています。また、原油価格の高騰も大きな一因です。とはいえ、株式会社日本総合研究所の「原油市場展望」によると、今後は80ドル台を中心とした価格に推移するという見通しです。
しかしここまで続く物価高騰に翻弄され、先行き不透明な中で、「きっともうすぐ落ち着く」と楽観視するのではなく、いかにコストを下げて売上を確保するかを検討することが重要です。
物価高騰の中では、下げられるコストをとことん下げる必要があります。そこでどのようなことを考える必要があるでしょうか。
コストダウンで最も大切なことは、「そもそも、今は何にどのくらいのコストがかかっているかを知ること」です。これを正確に理解していないうちは、コスト削減のしようがありません。まずは直近一年分の、一か月ごとの支出をすべて書き出してください。そこで、特に何にお金を使っているのか、無駄になっているものはないか調べます。
1~2か月の支出だけを書き出しても、季節ごとのお金の動きなどがわかりにくいので、なるべく一年分の帳簿を確認しましょう。
目標は漠然としていると、達成できません。例えば「ダイエットをしよう」と決めるより「3か月で4kg痩せよう」と数値を設定した方が、どのくらい努力が必要になるかが明確化し、具体的な行動に移しやすくなるでしょう。
コスト削減についても、具体的な目標設定が必要です。「3か月で10%削減する」「今年中に固定費を今より2万円抑える」など、いつまでにどのくらいのコストを下げるのか、数値を伴った目標を決めてください。数値が決まれば、その目標の達成のために何をどれだけカットすればいいかも決めやすくなります。
教室やスタジオなどを借りてビジネスをしている場合、より安い場所に引っ越すことで賃料を下げられます。固定費の中でも大きな割合を占める賃料をダウンさせると、それだけで経営が楽になることも多いです。
例えばピアノ教室を開いている場合、自宅でレッスンができないか検討してみましょう。現在住んでいる場所で教室を開くことが難しい場合、より広い場所に引っ越すという選択肢もあります。自宅の家賃は上がるものの、教室を借りる費用がゼロになるため、総合的に見てコストダウンができます。
また、オンラインレッスンに変更できないか考えてみましょう。自宅に顧客を呼べなくても、教室を借りる必要がなくなります。最近ではZoomやGoogle Meetなどを使ったピアノレッスンやパーソナルトレーニングも増えているので、ぜひ検討してみてください。
賃料以外にも、下られる固定費がないか見極めましょう。例えば電力会社の見直しも一手です。教室で契約している電力会社が本当に安いのかを調べ、より安価な会社があれば乗り換えてみてください。
また、ビジネス用にスマートフォンを使っている場合、格安スマホへの切り替えも検討できます。キャリアのスマートフォンは1万円以上の料金がかかっている方も、格安スマホにするだけで3000円前後に抑えることも可能です。
コストを下げる上では、小さな積み重ねが大切です。ペンなどの事務用品や、教室のトイレにおくトイレットペーパーなど、「こんなところまで?」と感じるところまでしっかり節約しましょう。
たった数百円しか変わらず意味がないと思うかもしれませんが、こうした工夫により単に出費が抑えられるだけでなく、節約思考が身につくという効果があります。ちょっとした買い物も「あちらのお店の方が安かった」「ネットでお得なものを探してみよう」と、自然にコストを下げる選択ができるようになります。
物価高騰の中、厳しい経営状況を乗り切る方法はコスト削減だけではありません。売上をアップさせることで収益を確保するという方法もあります。
個人事業や中小企業を経営していると、どうしても本業とは直接関係ない作業に時間をとられてしまいます。例えば毎月の請求書作成や帳簿の作成などに時間をとられ、「もっと本業に集中できれば、売上につながるのに」と考えたことが一度はあるのではないでしょうか。こういった状況を打開するためには、IT技術を取り入れて効率化を進めることが大切です。
まずは、今どんなノンコア業務に時間を取られているか見直してみましょう。時間がかかるわりに売上に直結していない業務については、無料のシステムやツールを使って効率化できないか検討してみてください。また、システム導入に多少のお金がかかっても、業務が圧縮されコア業務に費やす時間が増えて売上がアップするなら、総合的に考えるとプラスになるかもしれません。ほどよいバランスを取れるよう工夫してみましょう。
スーパーや飲食店などあらゆる商業施設で値上げが続いていますが、「顧客が離れてしまいそうだから、うちは値上げできない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。確かにただ「物価上昇が続くので値上げします」という理由であれば顧客離れにつながりますが、新しい付加価値をつけることでそれに見合った値上げをすれば、納得感を持ってもらえます。
例えばピアノレッスンをしている方であれば、教室でのレッスンに加え、自主練の様子をオンラインで見るといったことができます。パーソナルトレーナーの方は、自宅での筋トレについてアドバイスをしたり、食生活の指導などができるでしょう。こういったサービスの追加に伴い価格をあげるのであれば、顧客離れが起きにくくなります。。
物価高騰は経営を直撃し、非常に厳しい状況に陥っている方も多いでしょう。だからこそ、まずは「今、何にどれだけのお金がかかっているか」を確認し、カットできるコストをしっかり削減していくことが大切です。それだけではなく、売上を伸ばすことでより安定的な経営を実現できます。物価高騰は長く続いていますが、終わりがこないわけではありません。この厳しい時期を乗り切って、ぜひご自身のビジネスを加速させてください。